パックドカラム 担体
担体は液相を保持する役割を行い、試料成分の分離には直接は係わりませんが、その性能の善し悪しによりピークのテーリングや分解が生じます。そのため、分析用途に応じた選択が必要です。
担体として求められる必要条件は以下の通りです。
- 液相を安定して担持すること。
- 気液分配を多くして分離能を高めるために、液相に大きい表面積を与える構造であること。
- 担体自身が試料成分を吸着しないために、その表面が物理的・化学的に不活性であること。
- 液相のコーティングおよびカラムへの充填に耐える機械的強度があり通気性が良いこと。
- 高温分析にも使用できる耐熱性があること。
ガスクロ担体としては一般にケイソウ土担体がよく用いられます。ケイソウ土担体を大別するとレンガ系赤褐色担体と白色担体があります。
赤褐色担体は、白色担体に比較して比表面積が大きく、比較的、低い濃度から高濃度の液相をコーティングすることが可能です。白色担体は表面活性が少なく、低濃度液相コーティングでも吸着・分解現象がなく、高感度分析ができます。
その他、テレフタル酸やフッ素系担体などが種々の試料に応じて用いられます。
- ケイソウ土[レンガ系赤褐色担体、白色系担体]
- フッ素樹脂
- 水晶
- ガラスビーズ
- テレフタル酸
- 多孔質高分子(ポーラマスポリマービーズ)、カーボン
- 各種吸着剤(たとえばアルミナ、活性炭、その他GSC用担体)
担体表面には金属酸化物やシラノール基などが存在し、分析対象試料との間に相互作用が生じ、吸着現象や分解などを起こします。これらの障害を取り除くために、担体を酸処理やアルカリ処理を行います。また、シラノール基の活性をなくすためにシラン化剤を用いてキャッピング処理を施します。
処理 | 処理内容 |
---|---|
NAW | 無処理 |
AW | 酸処理(pH中性) |
BT | 強アルカリ処理(pHアルカリ性) |
BW | 弱アルカリ処理(pH中性) |
AW-BW | 酸、弱アルカリ処理(pH中性) |
AW-DMCS | 酸、DMCS処理(pH中性) |
弊社オリジナル担体
名称 | 摘要特長 |
---|---|
Shimalite® | 赤褐色ケイソウ土担体、中高濃度用 |
Shimalite® W | (フラックス添加焼成の)白色ケイソウ土担体、低濃度用 |
SHINCARBON A | 高純度カーボン担体 |
Sunpak-A | ポーラスポリマービーズ |
Shimalite® TPA | テレフタル酸担体、含水試料の分析 |
Shimalite® F | フッ素樹脂(四フッ化エチレンポリマー粉末)担体 |
Shimalite® Q | 水晶担体 |
Shimalite®
Shimalite®は、高純度ケイソウ土を原料に弊社独自の方法で製造した、低沸点試料から高沸点試料まで広範囲の分析に使用できる赤褐色系担体です。適度な比表面積(6〜8m2/g)をもち、比較的、低い濃度から高い濃度(5〜30%)の液相をコーティングすることができます。
Shimalite® W
ケイソウ土系白色真球形の担体です。
生化学・薬学関連試料(たとえば、ステロイド、アルカロイド、糖、アミノ酸、農薬)の分析に最も適しています。
表面活性がきわめて低いため、液相コーティング量をきわめて少なく(たとえば0.1%程度)した場合でも吸着現象が現れません。高沸点活性物質(生化学等関連物質)の微量・迅速分析に最適です。
■Shimalite® Wの物理・化学特性
*比較のためChromosorb® Wの物理・化学特性を示します。
Shimalite® W | Chromosorb® W1) | |
---|---|---|
Surface Area(m2/g) | 0.7 | 1.0 |
Surface Area(m2/cc) | 0.20 | 0.29 |
Free Fall Density(g/cc) | 0.23 | 0.18 |
Tapped Density(g/cc) | 0.29 | 0.24 |
pH Value | 8.5 | 8.5 |
1)Chromosorb® Wの項目の数値は、Johns-Manville社技術Bulletin No.FF101D より転載のものです。
Shimalite® TPA
Shimalite® TPAは含水試料を直接分析できるテレフタル酸担体です。
炭素数7以下の水中のアルデヒド、脂肪酸、アルコールなどの分析に最も適しています。
また、硫黄化合物(たとえば、メルカプタンなど)のような吸着性の大きな物質の微量分析にも使用できます。
(特許番号:549568)
Shimalite® F
Shimalite®Fはテフロン(四フッ化エチレンポリマー)担体です。現在実用化されているGC用担体の中ではカーボン担体(SHINCARBON A)と共に最も表面吸着活性が低く(少なく)、水などの吸着しやすい物質の分析に使用されます。
Shimalite® Q
Shimalite®Qは 水晶粒子の表面を適度に処理して液相の担持能を高めた吸着活性のきわめて少ない担体です。見掛比重が1.2〜1.3g/mlと大きい(ケイソウ土系担体の約4〜5倍)ため、また、比表面積がケイソウ土担体により極端に小さいため、常温では液相コーティング濃度は液体であれば0.5%以下、固体であれば1%までとなっています。担体以外の利用として、カラム内ガス流路の抵抗管充填物としても使用されます。
SHINCARBON A
SHINCARBON Aは合成高分子を焼成し、高度に不活性化した新しいタイプのガスクロマトグラフィー用高純度カーボン担体です。高い耐熱性や耐水性に富んでいます。
従来、用いられているケイソウ土担体、テレフタル酸担体、テフロン担体では対応できなかった低沸点物質から高沸点物質の水溶液および大気中の微量極性物質の分析にも使用でします。[この製品は弊社と日本カーボン株式会社との共同開発によるものです。(特許出願中)]
■特長
- 高度に不活性化されたカーボン担体です。物理的・化学的に非常に安定です。担体自身に試料成分が吸着しないため、アルコールや脂肪酸などの極性化合物に対して吸着はありません。また、加水分解を受けることがありませんので水溶液の分析に適しています。
- 液相の担持力および分離能はケイソウ土担体に匹敵します。
- 100%カーボンより成り立っていますので、不活性ガス(キャリヤーガス)中では高温での使用が可能です。
- 材質はガラス状カーボンであるため、機械的強度が強く、微粉の発生が少ないです。そのためキャリヤーガスの通気性がよく、カラム圧は低くなり、分離効率がアップします。
- ケイソウ土のような天然物ではなく、化学合成品ですのでロット間のばらつきがありません。
Sunpak-A
Sunpak-Aは独自の技術で開発した架橋度の高い高性能ポーラスポリマービーズです。
また、担体として使用し、液相をコーティングすることによって従来、ケイソウ土担体の充填剤では分解・吸着現象のため困難であった分析も可能です。
- 含水試料中の低級炭化水素C1〜C3
低級アルコールC2〜C7、無機ガスCO2の分析が可能です。 - 有機溶媒中の微量分析に優れた性能を有します。
Shimalite®-Ni[還元用触媒]
- ケイソウ土粒子表面に金属ニッケル構造の薄層をもった還元用触媒粒子です。
- 一酸化炭素(CO)、炭酸ガス(CO2)など、水素炎イオン化検出器(FID)に感度をもたない物質を、FIDに感度をもつ物質-メタン(CH4)に変換するための還元剤として有効です。
[一酸化炭素、炭酸ガス、ホルムアルデヒトなどのメタン変換による高感度分析(ppmレベル)用触媒です。]